かつては当たり前とされてきた「終身雇用」という価値観が、今や大きく揺らいでいます。メディアでは転職がポジティブに語られ、SNSでは他社で活躍する同世代の姿が日常的に目に入る時代。こうした中で、「また辞めるのか…」「せっかく育てたのに」という嘆きが企業現場から多く聞かれるようになりました。
特に悩ましいのは、「優秀な人材」ほど早く辞めてしまうという現実です。
給与や人間関係といった一般的な退職理由もありますが、彼ら・彼女らが求めているのは、やりがい・成長機会・自己実現。つまり「もっとできる場所があるのでは」という前向きな意志が、転職を後押ししているのです。
本記事では、こうした離職の背景にある構造を紐解きつつ、企業として何ができるのか――。
優秀な社員が“残りたい”と思える環境づくりのヒントを、共創ソリューションズの視点からお届けします。
1.優秀な社員ほど退職するのはなぜか?
―表面的な理由とその裏にある本質的な欲求―
① ―表面的な理由とその裏にある本質的な欲求―
優秀な社員が退職する理由として、よく挙がるのは「給与が低い」「仕事量が多い」「人間関係が悪い」といった労働環境にまつわるものです。確かにこれらは表面的には一因であり、どの職場でも起こり得る問題です。しかし、実際に話を深く聞いていくと、「それだけが理由ではない」と多くの方が口にします。では、なぜ優秀な社員ほど辞める決断に至るのでしょうか?
② 「もっと成長したい」という欲求
多くの優秀な人材に共通するのが、「このままで終わりたくない」「もっと自分を活かしたい」といった“成長欲求”です。現場での課題解決力や業務遂行力が高いほど、自分の能力を試したくなる傾向が強くなります。逆に、毎日がルーチンワークの繰り返しであり、先の展望が見えない職場では、「自分の未来が描けない」と感じ、転職を選ぶことが多くなります。
③ 組織の“硬直性”に失望する
優秀な人材は、職場をよりよくしようと積極的に意見を出します。しかし、「前例がない」「上が変わらない」「どうせ言ってもムダ」といった組織の硬直性に直面すると、理想と現実のギャップに失望します。自らを活かせる環境を求めて、新たな場所を探すのはごく自然な流れといえます。
④ 実は「辞めたい」のではなく「変えたい」
本当は今の職場に不満ばかりではなく、「もっと良くなるはず」「まだここでできることがある」と思っている人も多くいます。しかし、話す場がない、意見を受け止める仕組みがない、上司が聞いてくれない——そうした“対話の不在”が、辞意を固める決定打になってしまうのです。
つまり、優秀な社員が辞めるとき、それは単なる不満ではなく「期待していたけど、それがかなわなかった」という“期待の裏返し”であることが多いのです。
2.やりがいとは何か?
― 給与や待遇では測れない「働く意味」 ―
① 優秀な人が求めるのは「意味ある仕事」
やりがいとは、単に「楽しい仕事」「得意な仕事」ではありません。優秀な人ほど、自分の仕事が「誰かの役に立っている」「社会に価値を生んでいる」と感じられることを大切にします。たとえ高待遇でも、その仕事が「意味のない作業」と感じられるなら、長く続けたいとは思わないのです。
② 達成感よりも「成長の実感」が重要
優秀な社員は結果だけでなく、その過程でどれだけ自分が成長できたかを重視します。「挑戦できる」「裁量を与えられる」「学べる」環境があるかどうかが、その職場にとどまるかを判断するポイントになります。企業側が「うちはやりがいがある」と思っていても、本人がそう感じていなければ意味がありません。
③ 小さなフィードバックが「やりがい」を生む
「ありがとう」「助かったよ」といった小さなフィードバックが、やりがいの源になることもあります。特に若手や中堅層は、自分の存在価値を感じることでやる気が高まり、成長につながります。管理職や経営層は、日常的なコミュニケーションの中で「見ているよ」「期待しているよ」というメッセージを伝えることが大切です。
3.退職がもたらす影響
― 人材の流出が組織にもたらす“痛み”とは ―
① 「辞めた人」以上に「残った人」への影響が大きい
一人の退職が、実は“チームの士気”に大きな影響を与えることがあります。「あの人が辞めるなら、自分も…」という連鎖反応が起きるケースも少なくありません。特に優秀な人材の離職は、「この会社は成長できない場所かもしれない」といった空気を周囲に与えてしまいます。
② 教育コストと機会損失
新たな人材を採用し、育てるには多くの時間とコストがかかります。その上で辞められてしまえば、企業にとっては二重の損失です。さらに、優秀な人材が担っていた業務の質をすぐに再現することは難しく、企業全体のパフォーマンスにも影響を与えます。
③ 退職は「企業文化の鏡」
人が辞める職場には、必ず何らかの原因があります。辞める理由を丁寧に聞き取ることで、自社の課題が見えてくることもあります。退職者を「裏切り者」ではなく「気づきをくれる存在」として捉えることが、企業文化を変える第一歩です。
4.優秀な人材をつなぎとめるには?
― 共創ソリューションズが提案する“やりがい再設計” ―
① 「対話と共創」で本音を引き出す
共創ソリューションズでは、まず経営層と社員の対話を促すことから始めます。「なぜ辞めたいのか」ではなく、「何があればここで働き続けたいのか」を聞き出すことで、本質的なニーズを明らかにし、社員の“働きがい”を再設計します。
② ミッションと役割の再定義
優秀な人材が力を発揮するためには、「自分に期待されている役割」が明確であることが重要です。共創ソリューションズでは、個人の得意分野や価値観をベースに、組織との接点を見直し、新たなミッションやプロジェクトに再配置することで、やりがいを生み出す仕組みを提案します。
③ 「辞めない仕組み」ではなく「残りたくなる組織」へ
無理に引き止めるのではなく、「ここで働き続けたい」と自然に思ってもらえる環境づくりこそが、最も効果的な離職対策です。共創ソリューションズは、経営者と社員の視点をつなぎ、継続的に「成長」と「貢献」が実感できる職場づくりをお手伝いします。